理事長・校長ブログ
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2010/10/08
- 理事長・校長
「よい店の条件」
郁秋祭、きっと楽しんでいただけたと思います。ご来場者の皆様の満足度は93.7%でした。5,000人を超える皆さんにいらしていただき、たいへんありがとうございました。子供たちも一人一人が主人公として一生懸命がんばっていました。年々進化する郁文館夢学園の郁秋祭にどうぞご期待下さい。
さて、郁秋祭に先立って、起業体験プログラムに参加する生徒を対象に「よい店の条件」をテーマに理事長講座を行いました。その内容をここに再録いたします。
会社を設立し、運営していくためには三つのことを考えなければなりません。まず、ミッションです。日本語に直せば、「理念」です。何のために会社が存在しているのかを明らかにすることが一番大切です。例えば、私が介護事業(老人ホーム)を始めたのは、介護の厳しい現状を見て、ご老人を絶対に幸せにしてあげようという『思い』からでした。ニューヨークのライブハウスで食事をする人を見ながら、「人間は一見いがみ合っているように見えるが、こんな素敵な表情もするんだな、人間っていいな」という感情が湧きあがりました。そこで1人でも多くの方にふれ会いと出会いの機会を、そして安らぎの空間を提供したい、多くの人の笑顔に出会いたいというミッションを掲げて、資金を集め、外食産業を始めたのです。さらに、この学校の理念は「学校は子供たちの幸せのためだけに存在する」です。先生方はこの理念のもとに集まり、君たちを教育しているのです。みんなのお店も「何のために」を明確にしましょう。
ミッションができたら、次にビジョン(目標)です。例えば、5年後に100店舗にするとか、いくらの利益を上げるとか、目標を数字で表します。ビジョンが確立したら次に目標を達成するための戦略(=ストーリー)を作り上げなければいけません。これが難しいのです。ワタミであれば、例えば店舗数を目標にしました。この目標店舗数を割り出すにはきちんとした調査と計算が必要で、これをマーケティングと言いますが、このマーケティングから商品の価格も決まってきます。お客様が笑顔で買ってくれる一番高い価格が正しい価格なのです。一方で、経営側も利益が出て、税金を払うことができ、株主に配当金を払うことができ、さらに社員に給与を払うことができなければなりません。商品を買う側、経営側の最大満足のところに着地させるのがよい経営なのです。つまり、バランスが大切です。また、商品力を上げるためには商品がおいしいか、よいサービスが提供できるか、店が清潔か、企画力(どのように商品を売るか)があるかという4点に注意してストーリー(戦略)を作り上げるのです。私は外食のことがよくわからないまま、外食の世界に入って行ったので、もし自分がお客様だったらどんなお店がよいかという視点を常に持ち続け、それを形にしてきました。例えば、当時の居酒屋は灰皿交換をしませんでしたが、私の店では灰皿を交換するようにしました。これは自分がお客様であったら、灰皿がはいがらでいっぱいになったら交換してもらいたいと思うのが普通だからです。つぼ八が作成した七つの基準も参考になるでしょう。店が元気か、店員は親切か、店は清潔か、店員が礼儀正しいか、会計を間違えないか、お客様を待たせないか、おいしい商品が出せたかです。この基準もよいお店を経営するためのよい指針になります。さらに、繁盛店を生む私のもう一つの極意(戦略)もお教えしましょう。私はお店が終わった後に伝票を読み返し、毎日毎日、反省をしたのです。例えば、あっ、あの時もう少し早く料理が出せれば、もっと満足してくれたろうになという具合にです。君たちは今回二日間の経営ですから、初日の経営終了後にしっかりと反省をしてください。また、別の戦略もあります。戸越銀座にあるフィルム現像のお店を参考にしてください。このお店では店舗の半分をお客さんの写真を展示できるスペースにして、できるだけお店に来てもらうようにしています。お客様が写真を展示するときにはフィルムをプリントしなければなりませんから、その際にこのプリント用紙を使うといいですよというようにプリント用紙を売って商いをしているのです。このように、まず相手に利益を提供するという姿勢が必要です。また戸越銀座にある電気屋さんは電気製品が故障するとどこお店で買ったものでも無料で修理してあげます。そうすることで、次には冷蔵庫を買ってくれるかもしれないという可能性を引き出すのです。さらに、私は最近ナポレオンヒルの本を監修しましたが、そこにはペイフォーワード(先に支払う=先に損をしろ)という商売の秘訣も紹介されていました。
この講座の終わりに君たちに以下の言葉を贈ります。君たちが生きているこの社会は、自由主義社会で、お金が飛び交っているような印象を持つかもしれませんが、実際にはお金以外のものも飛び交っているのです。それはなんでしょう。そう、君たちの想像通り、ありがとうという言葉ですね。君たちは模擬店にいらっしゃるお客様から商品を売ってくれてありがとうというような感謝を集めるように努力してほしいのです。君たちの大切な仕事はありがとうを集めることです。誠実にありがとうを集めてください。
理事長 渡邉美樹
(写真は郁秋祭の模擬店の様子です。)