理事長・校長ブログ
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2017/08/01
- 理事長・校長
理事長インタビュー 「高校生社長講座~起業塾~」
「受験ポータルサイト 高校受験スタディ 取材記事より転載」
■高校生の起業家を輩出!「郁文館 高校生社長講座~起業塾~」を開講
2018年4月から、高校生版MBA「高校生社長講座」を開講する郁文館高等学校。日本初の高等学校における起業家育成プログラムとは?
日本は、欧米諸国に比べて、起業家教育が遅れていると言われ、開業率も低い水準にあります。郁文館高等学校では、こうした現状を打開し、日本経済再生につながる起業家を育成しようと、2018年4月に「高校生社長講座(通称・起業塾)」を開講。生徒たちは、高校3年次での実際の起業を目指します。高等学校で起業教育に取り組む思いや、意義を渡邉美樹理事長に伺いました。
≫高等学校では日本初の起業家教育
来年4月から、高校生の起業家輩出を目的とした「高校生社長講座~起業塾~」を開講する郁文館高等学校。実践的なプログラムを多く取り入れた内容で、生徒たちは在学中に会社を設立し、経営を行います。高等学校では、日本初となる本格的な起業教育。取り組みに至るまでの経緯について、渡邉美樹理事長はこう語ります。
「14年前に理事長に就任した時から、経営者を育てたいという思いはありました。しかし、その当時、生徒たちに夢を聞くと、社長になりたいと言うのは、全校でも数名いるぐらい。そこで、経営の面白さを知ってもらおうと始めたのが、文化祭で模擬店を出店、運営をする『起業体験プログラム』です。ここでは、事業計画から資金調達、決算報告まで、一連の起業プロセスを体験します。
こうした活動を続けているうちに、今度は、生徒の方から『文化祭のように守られた場所ではなく、外に出て本当のビジネスを体験したい』という声が出てくるようになりました。実際、空き店舗を数日借りて商売をした生徒もいて、私も事前に相談にのったりしましたね。本校の掲げる夢教育が浸透し、社長になりたいという生徒も徐々に増え、経営者を育成する気運が高まってきた。起業塾を開校するなら、このタイミングだと確信しました」
▶渡邉美樹理事長
▶文化祭での起業体験プログラム
≫起業への関心を高めるために起業塾開設へ
また渡邉理事長は、日本の起業の現状に危惧を抱いていることも「起業塾」を立ち上げる大きな理由だと話します。
「日本は欧米各国と比べて開業率※がとても低い。たとえば近年のイギリスの開業率は約14%と高く、アメリカも10%前後を推移していますが、日本は常に5%前後です。国も10%を目指して、いろいろ策を打っていますが、伸びていきませんね。開業率の低さは、国の活力の低下につながります。なぜなら、納税と雇用を生み出しているのは、企業だからです。これからの日本は、人口減少、少子高齢化が進み、それに伴ってGDP(労働人口×1人当たりの生産性)も減少していきます。こうした状況下で経済を盛り上げるには、新しい企業を増やしていく、つまり起業家を増やすことが重要なのです」
しかし、なぜ日本は開業率が向上しないのでしょうか。
「起業に踏み出せない理由として、知識・ノウハウがない、不安である、資金調達の目途がつかないことがあげられます。しかし、それ以前に日本人は、起業への関心が高くありません。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本の5か国で、起業に関するデータをとったところ、①周囲に起業家がいる、②起業に成功すれば社会的地位が得られる、③起業することが望ましい、④起業するために必要な知識、能力、経験がある、⑤周囲に起業に有利な機会がある、この5項目すべてにおいて、日本は最下位でした。この結果が、起業意欲や関心の低さにリンクしており、反対に5項目を満たしていけば、日本も欧米並みに開業率が上がると考えています」
※開業率…ある期間において、開業した企業数の期間当初の企業数に対する割合
≫本物の知識を教え、実践を多用したプログラム
そして、同校は来年度からいよいよ「高校生社長講座~起業塾~」をスタートします。予定では60名程の希望者を募り、3年間かけて様々な実践的カリキュラムを受講していくプログラムとなっています。1講座は120分ほどで、卒業単位としての認定も行います。
高校生版MBA「高校生社長講座〜起業塾〜」カリキュラム(案)
起業塾は、起業経験者である渡邉理事長が、専属メンターとして指導し、それ以外にも渡邉理事長の人脈から、著名な起業家や経営者、またベンチャーキャピタリストなどを講師として招聘する予定です。
「起業家だからこそ語ることができる、本物の知識や、起業のすばらしさがある。また、自分の経験上、あらかじめこのような知識があれば、遠回りをしなくて済んだというケースが数多くあります。それを生徒たちに直接教えたいですね」。渡邉理事長は、自ら指導にあたる意義をそう語ります。
また同講座は、社会人向けMBA講座同様に、ワークショップやグループディスカッションを多く取り入れることも特徴的です。「生徒たちには、株式のゲームなどもさせたいと考えています。仮想100万円で、株式投資をさせて、株価の変動をチェックする。自分が買った株が、なぜ上がったのか、下がったのか、株主総会での決算が自分の予想とあっていたかなど、OJTを繰り返していきます」
さらに、渡邉理事長が代表理事を務める公益財団法人「みんなの夢をかなえる会」における「ソーシャルマネジメントカレッジ」のノウハウが活用でき、会社を設立する時は、一般財団法人「ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ」から出資を受けることもできます。「起業塾は、先ほど示した起業に必要とされる5つの項目のうち、4つを3年間で取り組み、成果を出していきます」
①周囲に起業家がいる
⇒起業家に触れる機会を多くする。
⇒起業家が社会にいかに良い影響をもたらすかを知る。
③起業することが望ましいと思う
⇒起業のすばらしさを学ぶ。
⇒起業が多くの人の仕事、人生に資することを知る。
④起業するために必要な知識、能力、経験がある
⇒本物の知識、ノウハウを学び、実体験をする。
⇒アイデアを現実のものとする意欲を掻き立てる。
⑤周囲に起業に有利な機会があると思う
⇒機会に気づく力をつける。
⇒ビジネスモデルの作り方や資金調達を学ぶ。
⇒出資を受けることができる。
≫起業することの社会的意義を伝えたい
起業教育に関しては、アメリカはもとより、最近は日本の大学でも導入する動きが見られるようになりました。しかし、経営者の講義が少なかったり、知識中心で実践的でないものが多いのが実態のようです。そういう面で、同校の起業家育成プログラムは画期的であり、しかも高等学校で導入するのは、かなり先進的です。
「国語や数学の教育ももちろん大切ですが、お金の教育というのも、とても重要だと考えています。お金があって初めて、人々の生活も日本という国も成り立つのです。今後、郁文館では、お金の仕組みや流れ、国・行政が納税でどう賄われているかなど、お金に関する学びを中学校から取り入れていく予定です」と渡邉理事長。
「私が起業塾で一番伝えたいのは、会社のミッションとビジョンについてです。ビジョンとは、経営者の生き方の表現であり、経営は自分の創造力の賜物なのだということを教えたいですね。そして、起業するということは、真っ白なキャンバスに絵を描くことと同じで、大変ではあるけれど、本当にやりがいのあるダイナミックな仕事であること。そして納税と雇用を生み出し、国を動かす源を作っているのは起業家であり、社会的意義のある職業であることを、伝えていきたいと思っています」