レポート
REPORT
2019/12/27
- 郁文館高等学校
- 郁文館グローバル高等学校
- 夢教育推進部
NewsPicksの「専用空間」で深まる学びの世界 郁文館の現場から(転載記事)
ソーシャル経済メディアNewsPicksは、特定のユーザーのみが閲覧可能な「専用空間」をNewsPicksの中に開設できます。このサービスを、教育現場でも活用するプロジェクトを開始。第一段として、郁文館グローバル高校と郁文館高校e特進クラスに導入しました。生徒や教職員が、NewsPicks内の”学校専用”空間で、注目するニュースをPickし、コメントしあっています。
左から、坪尻さん・増田さん・新田さん・村上さん
この活動に関して、NewsPicks委員会の生徒と担当の木村教頭先生、中嶋先生にインタビューしました。聞き手は、本プロジェクトを推進するNewsPicks蒲原(かもはら)が務めます。
「なんか、おもしろいことをしたい」
――今日はよろしくお願いします。郁文館グローバル高校は、2年時には全員が1年間留学したりゼミ活動があるなど、生徒の自主性が特徴的な学校だと聞いています。皆さんはどうしてこのプロジェクトに関わろうと思ったのですか?
村上:
NewsPicksを導入する以前から、ほぼ毎朝、全校生徒が講堂に集まって、ニュースを題材に対話するNews In Education(NIE)という活動をしていました。ニュースから学び、自分の意見を持ち発信する力の強化とメディアリテラシーの向上することが大きな目的です。
今回NewsPicksさんと一緒に取り組めるということで「NewsPicks NIE」を新設し、有志の生徒によるNewsPicks委員会も誕生したんです。
坪尻:
私は、もともとニュースへの興味とかってすごく薄かったんです。でもこの学校に入学して、世界って本当に広いのだなと気づかされて。2年生になると留学もするので、それに向けて、世界がどうなっているのかを知っておかないとな、と思ったのがきっかけです。運営に入ると否が応でもやらなきゃいけなくなるので(笑)。
増田:
私は将来、社会の先生になりたいんです。社会の授業って一見つまらないのですが、身近な社会問題とかと結びつけるとすごくおもしろくて。知れば知るほどおもしろくなるので、自分がもっと知る機会をつくりたかったのと、運営を通して企業の方々と触れ合う機会をつくれるのがすごくいいなと思ったんです。
新田:
僕は勉強があまり好きじゃなくて。「もっとおもしろいことをやりたい」って先生にいつも言っていたんです。そうしていたら先生から「こういうおもしろいやつあるけど、入ってみない?」って誘われたのがきっかけですね。
村上:
僕も、もともとは教科書の上だけの勉強がすごく嫌いで。
僕には夢があるんです。いつか、「真のグローバル化」を実現させたいとずっと思っているんです。最初のきっかけはチョコレートを眺めていたときなんですが、カカオ豆を栽培している人や加工している人たちは、最終的にチョコレートに加工された姿をイメージできているのかな、とふと気になったんです。
僕たちは、ちょっと調べればわかる環境にいますが、国境や地域の壁でそれができない人たちがいるなら、国境をぶち壊しにいけるぐらいの人間になりたい。そのためには多様性の正しい理解と、グローバルに通用する教養が必須なんです。だからニュースを通して世界の現状を理解し、議論するNIEに参加しています。
コメントを通して、ニュースとの接し方が変わった
――NewsPicksを導入して、変化したことはありますか?
増田:
このNIEの取り組み自体は以前からあって、もともとは新聞をみんなで読み合っていたんですよ。NewsPicksってホリエモンさんとか、いろんな人のコメントも読めるじゃないですか。コメントも読んで「こんな考え方もあるんだ」とか、事実だけじゃなくて、それに対してどう思っているのかを感じられるようになりました。自分もそう考えられるようにならなきゃなと、ニュースの受け取り方の幅が広がったと思います。
坪尻:
ニュースに対して問題意識というか、興味を持つというのは実感してきています。これまでは家でニュースや新聞を見る機会って、ほとんどなかったんですよ。テレビをつけてもバラエティしか見なかった。
今はNewsPicksで取り扱ったニュースがテレビに出てきたら「ちょっと見てみようかな」と思ったり、パソコンを開いて調べたりするようになりました。目標にしていた「ニュースに興味を持つ」部分に近づいてきてるのかなと思っています。
村上:
あとは自分が変わったわけではないんですけど、普段クラスでは静かな子が、NewsPicksですごくロジカルなコメントをしてくれてたんです。その瞬間、僕はめちゃくちゃおもしろくて。普段はしゃべらないけど、こんなにたくさん考えてるんだなと。
やっぱりクラスでの生活と、その人の思考って違うはずですよね。そのギャップを知ることができて、もっとそういう才能や個性を発揮してもらえる場にしていかないとな、と意識が変わった瞬間でした。
卒業後はアメリカの大学に進学するんですが、9月まで時間があるので、それまでの間はできるだけ学校に来て、2年生とのコミュニケーションを続けていこうと考えています。パッションのバトン――みたいに言うとかっこつけていますが(笑)、きちんと受け継げるように、たくさん話していきたいと思っています。
新田:
僕はこれまでNIEって誰かがやってくれるもので、でもそれがつまらなかったんですよ。NewsPicksと一緒にやることになって「じゃあおもしろくしてやるよ!」って言って入ったんですね。でもやってみると、めちゃくちゃ難しくて。やっぱり外野から言っているだけなのと、実際にやってみるのとでは全然違う。その大変さを知ることができました。今はどうやったらクラスや学年のみんなに貢献できるかを、真剣に考えています。
【先生インタビュー】生徒自身がリードする校風が培われた理由
――今日はありがとうございました。生徒さんたちのお話を伺って、とても自主性にあふれる校風を感じました。
木村和貴氏(以下、木村教頭):
郁文館グローバル高校の位置づけは、とにかく新しいものをまず試す「実験場」のようなところなんです。「グローバル」という名前のとおり、これまでもあまり学校のフレームにこだわらずにやってきました。
我々の学校では、高校2年生が1年間留学する制度があります。高校1年生のうちに、1人でどうやって生きていくかというのを1年かけてしっかりと仕込んで、2年生で解放する。そして3年生になったら1年生をリードする、というようなサイクルが出来上がってきています。
高校生ってなかなか自分の意見は言わないんですよね。でも、留学先で生き残るためには「自分の意見を言うスキル」は不可欠です。なので、これを鍛える仕組みが絶対に必要で、グラウンドを何周走ったというような単純な練習量が重要。それがNiEでした。毎朝とりあえずニュースを読んで、意見を言い合う。それをとにかく毎日繰り返すことで、やっと意見を口にするようになってきました。
――どうやって、その文化が培われてきたのでしょうか?
中嶋一裕氏:
留学ってすごい力を持っていて、海外に行くと意見を言う力が急激に伸びるんですよね。それを高校2年生の1年間やってきた彼らがいるので、3年生になると教師側が質問をするなどの工夫しなくても話してくれます。
留学を経験した3年生がリードすることで、1年生はモデルケースを見ているわけです。彼らに憧れて雄弁に語りはじめる、それを見ながら触発されて、しゃべるのが苦手な子たちも自然としゃべっていく――初めは驚きました。何でこんなに勝手に動いてくれるんだろうって。私の今までの経験では、まずはグループワークの仕方から構築しなければならないのですが、議論を進められる文化が自然と出来上がりつつあると感じています。
生徒と社会をつなげたかった
――NewsPicksを導入しようと思ったきっかけを教えてください。
木村教頭:
この取り組みは、もともとは私がNewsPicksアカデミア会員だったことから始まりました。
私は『教養としてのテクノロジー』という本が好きなのですが、NewsPicksはまさに落合陽一さんなど、テクノロジーに造詣が深いオピニオンリーダーが集まるソーシャルメディアという認識でした。NewsPicksさんと何か一緒にやろう! となったときに、学校専用のタブ(注:生徒・教職員だけが見れる専用空間)も設けていただけるという話になり、これはメディアリテラシーの醸成にも良いなと思って、今に至ったという経緯です。
―― 導入してみてどうですか?
中嶋先生:
NewsPicksで学校専用タブを開設しても、やっぱり読む層と読まない層は分かれますね。でもそれをどう改善していくかも生徒の自主性に任せていて、そのやり取りがとてもおもしろい。苦労といえば苦労ですが、その過程も含めて楽しめていますね。
普段生徒となかなか会話しないベテランの教員が記事にコメントをしたら、生徒がすごく喜んで、「先生、あのニュース面白かったですね」と話しかけるようになりました。今まで話さなかった教員と生徒の関係性が近くなる、コミュニケーションツールにもなっていると実感しています。
木村教頭:
学校というのはどうしても閉鎖された空間なので、NewsPicks導入によって風穴が空いたという感覚は間違いなくあります。デザイン性もいいですし。生徒だけでなく教職員も嬉しいと思っていて、やる気になっている職員もけっこういます(笑)。
中嶋先生:
生徒たちにはやっぱり、どんどん外とつながっていってほしいですね。外に連れて行くと、学内とは全然違った顔をするんですよ。
その意味では、これからは生徒にもっと発信者になってほしい。学校って本当に閉ざされているので。今は学内限定の専用タブにコメントを投稿していますが、将来的にはNewsPicksに記事として、ゼミや留学の様子をレポートとして投稿し、それが一般ユーザーの方にも読まれたらどうなるのか試してみたい。そういったリテラシー教育を実践していきたいと思っています。
木村教頭:
まだ全然具体化していない話なんですけど、他の学校の方もこの専用タブに入ってもいいんじゃないかと思ってるんです。アフリカやアジア、インドに行っている生徒のゼミ活動の報告場所をNewsPicksにしてもいい。この仕組みをどんどん広げていけば、学校と社会がもっとつながっていくんじゃないかと思っています。
この12月、1年間留学していた2年生が帰ってきました。彼らは新たな「NewsPicks NIE」の担い手として活動を始め、年明けから留学する1年生は、留学先からも継続してNewsPicksを活用する予定です。そして4月には新入生を迎え、新たな「NewsPicks NIE」が始まります。
※こちらの記事は教育新聞からの転載記事となっております。
https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20191014_01/